ゲラチーの気まぐれ雑記

日々自分が思っていたことや考えたことを記録する日記

アニマルウェルフェアについてⅢ酪農

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当ブログにお越し頂き、ありがとうございました。

「アニマルウェルフェア」3回目は牛についてです。

 

吉川隆盛元農林水産大臣が、大手鶏卵会社の元代表から、

500万円を受け取った収贈罪の裁判が始まり、

背景には日本のアニマルウェルフェアが世界水準に追いついておらず、

策定中の採卵鶏に関する国際基準案を業界として

阻止する意図があったことが明らかになっています。

 

アニマルウェルフェアとは、動物福祉とも言われ、

家畜の動物としての幸せや人道的な扱いを実現するための

飼育の仕方を意味しています。

 

詳しい定義は以前の記事に書いていますので、

参考にして頂けたらと思います。

 

 

gerati.hatenablog.com

 

   牛の飼育の現状 

 

畜産動物がどんな風に飼育されているのかを

外部の人が知る機会はほとんどありません。

 

生産と現場が離れすぎた結果、

畜産について理想的なイメージを抱く人もいます。

 

広々とした草原で草を食む牛、親子の睦み・・・

しかし、そういったものは現代の畜産からはほぼ排除されています。

 

理想的なイメージは、畜産物のパッケージや宣伝文句で

植え付けられたものかもしれません。

 

しかし、実態は異なります。

 

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   酪農施設で働いた方の体験談

 

「乳牛」と聞いて、真黒な牛と白黒模様の牛のどちらを

思い浮かべるでしょうか?

 

白黒模様のホルスタイン種のメス牛は、黒い子牛も出産します。

 

なぜ、白黒のホルスタイン種のメス牛は、

自然に子供を産んでいるわけではありません。

 

牛の出産は人間の手で完全にコントロールされており、

家畜人口受精師という資格を持った人間の手で、人口受精されています。

 

その時に乳用種であるホルスタインのオスの精子が注入されれば白黒に、

肉用種の精子が注入されれば、黒い牛も産まれます。

 

メス牛たちは大人のオス牛と触れ合うこともなく、

自分の意思ではなく子牛を産まされ、乳を絞り取られています。

 

トキメキも知らず、何一つ分からないまま、

メス牛たちは、子牛を出産させられます。

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肉用牛の精子を注入されて産まれた子牛は、オスでもメスでも肉用として、

1週間ほどで農場から出て行きます。

 

子牛は産まれた直後にお母さんと過ごすこともなく、

お父さんの顔も知らず、お母さんともお別れします。

 

「直後」という表現に疑問を感じる方もおられるかも知れませんが、

子牛は、引っ張り出されたら、そのままさよならするのです。

 

母牛は、出産が近づくとあちこち、うろうろと歩き回ります。

立ったままだったり、座り込んだりとスタイルは色々です。

 

従業員は見えてきた子牛の足と自分の体にロープをつなぎ、

歩き回る牛に手こずりながら、後ろに体重をかけて介助します。

 

母牛が出産するコンクリートの上には、ワラすらありません。

 

コンクリートの上に引っ張り出された子牛は、

そのままソリに乗せられて、洗い場に移動させられます。

 

子牛は、母牛の乳房から一滴の乳を飲む事も無く、

母牛は子牛をたった1回でも舐めることもできません。

 

ただ、夜中に出産した場合は少し違います。

従業員が見回りに来る間、ある程度の時間、

母子は触れ合うことができます。

 

でもそのような場合は、母牛に情がわき、

子牛を引き離す時に攻撃してくることがあるため、

農場では母子の触れ合いは良くないものとされていました。

 

子牛たちはすべて個別に囲いの中で単飼いされており、

1頭ごとに与えられたスペースは、前後に3歩歩けるほどで狭いものです。

 

産まれて1日どどしかたたない、まだ目がはっきり見ていない子牛は、

哺乳瓶のゴムの乳首を差し出しても何か分からず、

怯えて後ずさりしたりします。

 

そういう子牛を従業員は抑え、固いゴム製の乳首を口に押し込み、

ミルクを飲むことを覚えさせます。

 

ミルクは朝夕2回のみで、子牛たちは数分で飲み終わり、

すぐに回収されます。

 

人間の赤ちゃんと同じように、子牛にとっても母牛の乳首代わりの哺乳瓶は

精神的安定のために必要なものですが、すぐに回収されます。

 

固定のために結んでいるヒモの飛び出た部分を

何度も口に当てる子牛もいました。

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この施設は、牛をつなぐタイプの農場ではなく、

うしが牛舎の中を自由に歩き回れる飼育方法でした。

 

つなぎ飼いよりもフリーなほうがずっとましだとは思いますが、

牛たちは幸せには見えませんでした。

 

牛たちは野外の運動場もなく、牛舎の中だけで生活していました。

定期的に床の掃除は行われますが、牛は人間の何十倍も排泄します。

 

床を綺麗な状態に保てるのは、掃除の後のわずかな間だけでした。

毎日固い床で寝起きを繰り返すので、

足の関節に炎症を起こしている牛も多くいました。

 

沢山の乳を出すように育成されてきた弊害なのか、病気の牛も多く、

そういった抗生物質などで治療中の牛は、まとめて集められ、

別の囲いに入られていました。

 

牛の背後から搾乳機をセット作業をしていると、

関節の炎症や体の汚れの様子がよく分かりました。

 

そういう牛たちを見ていて、幸せを感じることはありませんでした。

                    (HOPEforANIMALS引用)

 

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      牛が快適に暮らす牧場

 

欧米ではオーガニック食品同様、

アニマルウェルフェアは消費者に浸透しつつあるほか、

世界動物健保機関(OIE)が基準を策定するなど、

世界的に様々な動きが加速しています。

 

しかしそんな潮流とは関係なく、以前から「家畜の健康と幸せ」に

配慮した農場は国内に少なからず存在していました。

 

北海道・せたな町で循環型の放牧酪農を行う村上牧場も

その一つです。

 

牛本来の自然な飼い方をしたいと、

2003年につなぎ飼いから放酪農へ転換。

 

自家飼料と最小限の配合飼料(NON-GMO)でホルスタイン約40頭を、

自家製チーズ用としてジャージー、ブラウスイス13頭を

放牧草と乾草で育てています。

 

2008年には、Uターンした3代目の村上健吾さんが、

農場内にチーズ工房を開設。

 

オーガニックミルクの風味が生かされたナチュラルチーズは、

輝かしい受賞歴を持つなど評判が高い。

 

仕事のやりがいは『牛とともにある生活そのものです』と

答えられました。

 

『子牛の時から一頭一頭に名前をつけて、愛情たっぷりに育てると、

 とても懐いて、やがて美味しいミルクを出してくれる』

 

『牛は、家畜であり家族でもある特別な存在です』

 

『牛自身は放牧より人間から配合飼料をもらった方が、』

『楽かもしれないし、幸せかどうかは人には判断できないけれど』

『できるだけ自然に近い形で健やかに育てています』

 

そうして育った牛たちは、驚くほど人懐っこく、穏やかです。

 

ストレスによっても生乳は変化するため、

村上牧場のチーズが高品質である理由には、

こうした愛情深い飼い方も起因していると、言えそうです。

 

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産業動物である以上、いずれは屠畜の日を迎えますが、

死してなお愛情を注ぐのが村上牧場流です。

 

『屠畜した牛は、取引先や仲間と一緒に解体して食べたり、

 革はなめして革製品にして販売したり、余すことなく利用します』

 

『牛を可能な限り生活に落としこんで糧として循環させることが、

 暮らしの充実にも繋がっています』

 

『安く安定的に供給する大量生産は合理的ですが、自然の循環の中で

 無駄を省いて食べ物を生む、このようなやり方も1つの合理性』

 

『豊かさの1つの形として、楽しみ」ながら実践していきたいですね』

 

幸せな牛とともに幸せな酪農家の姿がここにはありました。

                 (RGRI JOURNRL引用)

 

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   我が子を育てるがごとく・・・

 

広島県福山市にある、牛肉生産・加工・販売の「なかやま牧場」。

始まりは1960年。

 

創業者の中山伯男さんがわずか3頭の牛の飼育から始めたなかやま牧場は、

現在広島県岡山県に3つの直営牧場に9000頭近くの牛を

飼育しています。

 

創業から変わらないのは、牛の飼育において

「わが子を育てるがごとく、牛の世話をする」ということです。

 

狭い仕切りの中に牛を押し込んだり、牛に鼻輪をつけたり、

角を切ったりということは最初から一切していません。

 

動物たちは産まれてから死ぬまで、その動物本来の行動をとることができ、

幸福でなければならないという考え方を、

なかやま牧場は自然に実践してきました。

 

育て方も牛に負担をかけるビタミンのコントロールや、

抗生物質にによる肥育などは一切していません。

 

牛たちは好奇心旺盛で、取材陣に牛のほうから続々と近づいて来ます。

                      (ヒトサラ引用)

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          最後に

 

人間もストレスが病気の源であるように、

動物たちもストレスは体に色々な影響が出ます。

 

家畜の動物たちにストレスの無い快適な生活を配慮することは、

ミルクの出が良くなったり、美味しい卵を産んでくれたりします。

 

家畜を人間の食べもの扱いし、動物の幸せを全く考えないやり方は、

やはり、どこか不自然な気がします。

 

人間が幸せな一生を送りたいように、例え家畜に産まれてきても、

幸せな一生を送りたいはずです。

 

動物の命を頂く引きかえに、

家畜に幸せな一生を与えるべきではないのか?と

アニマルウェルフェアの記事を書いていて思いました。

   

この記事を書くまでは、豚や鶏がどんな環境で生きているのか?

牛が歩くことなく繋がれて飼われているなんて、知りませんでした。

 

このブログは、自分の勉強のためのブログで、

知っていることを書くこともありますが、

知らないことを書くことの方が多いのです。

 

今回のアニマルウェルフェアのことは、知らないことばかりで、

衝撃を受けたこともあり、動物好きなゲラチーには胸が痛みました。

 

今一度、動物たちの命を頂く意義を考え、

家畜の幸せを考えてみます。

 

貴重な時間を使って頂き、ありがとうございました。

 

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