ゲラチーの気まぐれ雑記

日々自分が思っていたことや考えたことを記録する日記

アニマルウェルフェアについてⅠ養鶏

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当ブログにお越し頂き、ありがとうございました。

 

吉川隆盛元農林水産大臣の裁判のニュースの中で、

「アニマルウェルフェア」という言葉を初めて聞きました。

 

今日は「アニマルウェルフェア」についてです。

 1回目は鶏についての「アニマルウェルフェア」の話になります。

 

色々調べて記事を書いているうちに、家畜と呼ばれる動物たちの扱いに

時には腹立たしく、時には悲しく、時には嬉しくなったり・・・

 

この記事を書いていて、最近よく聞くようになった、

ベジタリアン」や「ヴィーガン」の人たちの気持ちが

少しわかるような気がしました。

 

 アニマルウェルフェアとは?

 

6月25日、吉川隆盛元農林水産大臣が、大手鶏卵会社の元代表から

500万円を受け取ったとして、収贈罪で裁判が始まりました。

 

背景には、日本が

「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の世界水準に追いついておらず、

策定中の採卵鶏に関する国際基準案を業界として

阻止する意図があったことが明らかになっています。

 

「アニマルウェルフェア」とは、

家畜の動物としての幸せや人道的な扱いを実現するために、

ストレスのない環境や方法で飼育することを意味しています。

                     (EcoNetworks引用)

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「アニマルウェルフェア」とは、

感受性をもつ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、

誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、

行動要求が満たされた、健康な生活ができる飼育方法を目指す

家畜のあり方です。

 

欧州発の考え方で、日本では「動物福祉」や「家畜福祉」と

訳されてきました。

 

1960年代のイギリスでは、工業的な畜産のあり方を批判した、

ルース・ハリソン氏の「アニマルマシーン」が出版され、

大きな関心を呼びました。

 

イギリス政府が立ち上げた委員会は、

「すべての家畜に立つ、寝る、向きを変える、身繕いする、

手足を伸ばす自由」という基準を提唱しています。

 

こうした動きを受け、家畜の劣悪な飼育環境を改善させ、

ウェルフェア(満たされて生きる状態)を確立するために、

次の5つの自由が定められました。

 

1、空腹と渇きからの自由

2、不快からの自由

3、痛みや傷、病気からの自由

4、正常な行動を実現する自由

5、恐怖や苦悩からの自由

 

今では、「5つの自由」は家畜のみならず、

人間の飼育下にあるペットや実験動物など、

あらゆる動物のウェルフェアの基本として世界中で認められています。

                (アニマルウェルフェア畜産協会引用)

 

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進まない日本のアニマルウェルフェア

 

オリンピック・パラリンピックの食材調達の要件の一つに

アニマルウェルフェアに関する記述があります。

 

これを機に日本の人々のアニマルウェルフェアへの意識や関心が

高くなる期待がありましたが、残念ながら現状はそうはなっていません。

 

近年では投資家からも注目され、

世界の主要食品企業のAWの取り組みについて毎年報告書が

出されています。

 

スターバックスマクドナルドなどの多国籍企業も次々と

AW対応を表明し始めています。

 

しかし、日本では現在に至るまでAWの議論が高まる気配はありません。

 

今回の元農林水産大臣の贈収賄事件は、

鶏卵生産者が農水相にAWの国の基準への反対意見の取りまとめを

働きかけたものと言われており、

世界のAWトレンドに逆行する由々しき問題でしたが、

それでも国内世論の関心が高まることはありませんでした。

 

AWについて国際的な影響力を持っていますが、

日本を含む世界182の国と地域が参加する政府機関

OIE(国際獣疫事務局)です。

 

OIEは科学的知見に基づきAWのルールーを定めており、

加盟国はそれに則して取り組みを進めています。

 

しかし、各国の取り組みレベルには大きな差があるの現状です。

                      (KOKOCARA引用)

 

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   日本の畜産の現状

        鶏卵

 

卵を産むために育てられる採卵鶏には、4つの飼い方があります。

 

「放牧」「平飼い」「エンリッチドゲージ」「バタリーゲージ」です。

日本の主流は「バタリーゲージ」で、92%の採卵養鶏上が

採用しています。

 

何段も積み重ねられたケージの中で鶏を飼育し、1羽あたりの面積は、

鶏の体よりも小さい平均サイズ(257mm×182mm)ほどです。

 

効率的かつ安定的に生産できることから、

山が多くて平野部の少ない日本で選ばれています。

 

また、低価格で優れた品質の卵の流通に繋がっている点も

否定できない事実です。

 

しかし、AWの視点や生産者の手間などはかみされていません。

      

日本の採卵鶏場では、

ワイヤーでできた金網のケージ「バタリーケージ」に

過密状態で詰め込まれている状況は、非常に衝撃的です。

 

1羽が入るのがやっとの狭いケージの中で、脚が折れている鶏、

病気で衰弱した鶏、卵を産み続けることによって

性殖器のダメージから卵が詰まり、腹水や腫瘍を患う鶏など、

こうした環境下で鶏がどうような一生を終えるの分かります。

 

日本の養鶏場の9割以上がバタリケージを使用しており、

これは私たち日本の消費者が目をそらしてはいけない現実です。

                     (EcoNetworks引用)

 

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バタリーゲージは2000年代後半から、EUをはじめ、

スイス、米国の6州、ブータン、インドで禁止されています。

 

しかし、日本では鶏のバタリーゲージの規制はなく、

豚もストール飼いが9割近くを占めています。

 

そのような差が生じるのは、

例えば1羽あたりの飼育面積や設備内容などの具体的な規定や記述、

そして、法的な拘束力がないからだという指摘があります。

 

現状の日本政府のAW対応は「動物愛護管理法」と

畜産協会(農林水産省の外郭団体)の

「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼育管理指針」を

基準にしていますが、具体的な規定や記述は見当たらず、

「法令」でもないため強制力も伴いません。  (KOKOCARA引用)

 

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  AWに配慮した飼養法

       平飼い

 

そんな日本でもAWに配慮した飼養を行う生産者は存在します。

 

パルシステムをはじめとする生協に平飼いを出荷している

JAやさと(茨城県)もその一つです。

 

「平飼い」は、鶏が自由に動き回れるようにして飼育する方法です。

 

太陽の光と風の入る鶏舎で、地面を足で掘ったり、

くちばしでつついたり、止まり木で休息したりして過ごします。

 

生産者の方のお一人は、

『平飼いでも過密状態で飼ってしまっては意味がないですから』

 

『ヨーロッパの基準も参照にしながら、

 今は坪当たり15羽以下で飼育しています』

 

『生協との関係を積み上げてきた中で具体的なルール作りをしてきました』

と言われておられます。

 

飼料に抗生物質や抗菌剤は一切使用していません。

その分、鶏舎を衛生的に管理し、健康的に飼育する必要があります。

 

手間はかかりますが、育てる側にもメリットはあると感じているそうです。

 

ここの鶏は人懐っこく、見学の方などが来られると寄っていくそうです。

その姿に癒されるそうです。

 

休みが無くても毎日気分よく仕事ができるのは、

命と向き合っているからだと言われておられます。 (KOKOCARA引用)

 

youtu.be

 

   エイビアリーシステムとは?

 

「エイビアリーシステム」という多くの鶏を、

面積をとらないで飼育できるシステムが開発されています。

 

日本は土地が狭いので、バタリーゲージが使われてきましたが、

土地に関しては日本だけではなく、デンマークやオランダなどの

国土の狭い国もゲージを使わない飼育方法、

ゲージフリーは実現しつつあります。

 

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    肉用鶏飼育の現状

 

国内では7臆羽以上が飼育されています。

 

薬剤耐性菌の産出とも深く関わる肉用の養鶏は、

社会の持続可能性にとっても重要であると言えます。

 

課題1 急速な成長

本来120日かけて成長になる鶏を、

40~50日で成長になるように品種改良してきました。

 

そのため、鶏たちは歩くことが困難になり、立てなくなり、

代謝障害になって腹水症や突発死症候群になり、

運動量が低下することが分かっています。

 

体重が重いと筋肉が変性し、肉の品質も低下します。

 

解決策としては、

品種改変が進みすぎていない品種を選ぶことが可能です。

 

課題2 蜜飼い

日本の肉用鶏の蜜飼いの環境は悪く、

EU規制の1,4倍、ブラジルの1,8倍の過密飼育状態が起きています。

 

高い飼育密度は脂肪率の上昇、足の障害や皮膚炎の発生率上昇、

低い歩行能力、仰制された行動の自由、劣悪な床の状態、

熱ストレスの原因にもなります。

 

動きが少ない状態は体重増加を早めるため、蜜飼いは課題の一つです。

 

対策としては、30kg/㎡以上の飼育密度を保つことが求められます。

 

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課題3 不毛な鶏舎

集約的畜産においては多くの鶏舎は、自然光がなく、

鶏の自然な行動の発現を妨げています。

 

成長期に必要な相対湿度、劣悪な大気環境、床の劣悪化、

などは、低い活動レベルは皮膚炎や呼吸器問題を引き起こします。

 

解決策としては、鶏舎の十分な通気性、

清潔で乾燥した藁を提供する必要があります。

 

また、自然光を入れ、藁のかたまり、止まり木、

つつき対象物を提供します。

 

さらにできる限り屋外エリアも提供し、木々、低木、草などの自然物も

提供されるとなおよいでしょう。

 

未だに多くの肉用養鶏場が深夜も電気を煌々とつけて、

前時代的な考えで養鶏を続けています。

 

高度成長期に取り入れた畜産のまま、

固定観念を取り除くことができず、残酷な行為を正当化し、

動物を苦しめ続けています。

 

一人ひとりが問題を正確に知り、改善の意思をもつことが重要なのです。

                     (HOPEforANIMALS引用)

 

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     最後に 

 

卵の大量生産自体が鶏を追い詰めていることは事実です。

卵の価格はもともと不当に安いと言えます。

 

しかし、生産者だけに負担を強いるのは間違っています。

 

アニマルウェルフェアに配慮するだけの価格を払い、

さらにそこに適正な対価も支払うべきなのでしょう。

 

鶏に優しい飼い方=平飼いや放牧の卵に適正な対価を支払うことが、

良いのではないでしょうか?

 

意外に想うかもしれませんが、畜産のアニマルウェルフェアは、

投資にも影響が及んでいます。

 

284兆円を運用する機関投資会社23社が、

アニマルウェルフェアに関する宣言に署名しており、

海外投資家の投資の際の指標の一つになりつつあります。

 

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普段食べている卵や食用鶏肉がどういう状況で生産されて、

私たちが食しているかを知ることは、必要なことです。

 

鶏たちがこんな状況で育てられていることは、知りませんでした。

 

以前見たテレビで、鶏たちの餌を自分で配合し、

美味しい水を飲ませられるように、

そういう土地で放牧をしている方を紹介していたので、

 みんながそうではないにしろ、そういう環境も多いと

勝手に思い込んでいました。

 

記事のなかの鶏が飼っている人だけでは無く、

見学に来た人たちにも寄っていく様子を思い浮かべ、

微笑ましく思いました。

 

そして、ライチョウのことを思い出しました。

海外のライチョウは人を恐れますが、

日本のライチョウは人を恐れません。

 

それは、日本人がライチョウを大事にしてきたことにより、

ライチョウとの間に信頼関係ができていたからでしょう。

 

人も動物も寿命があります。

人間が幸せな一生を送りたいように、

鶏も幸せな一生を送っていいはずです。

 

鶏の幸せって何でしょう?

 

安全で美味しい餌を食べて、気ままに散策できる場所があって、

安心して眠れる寝床があって・・・

そして人に可愛がられることではないでしょうか?

 

養鶏農家の皆様には、そんな環境を鶏に与えて欲しいと思います。

 

その為には、安価な卵を望み過ぎないことも必要なのかな?

と思いますし、卵や鳥肉を食べる回数が減っても

仕方ないことだと思います。

 

鶏さんが身をけずって産んでくれた卵を頂けることに感謝し、

自分が鶏さんの命を頂いていることを肝に銘じます。

 

次回はアニマルウェルフェアの養豚について、書きたいと思っています。

貴重な時間を使って頂き、ありがとうございました。

 

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